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いわゆる“その他の音”ってメインのリズムやリードに被らないように EQ でカットしまくりなのでそこはアナログ AD/DA を通した音でなくても十分で、これからはますますそういう風になっていくのなら、入力装置としての鍵盤と基本的なサウンドとそのシンセならではの突出したサウンドをこなす一台があれば十分かなというのが今回の決断で、それで選んだのが Roland V-SYNTH GT Version 2.0 です。

VA 好きなのでその他にも Nord Lead 3 や Virus Ti などが候補として考えていたのですが、鍵盤数が足りないや自分の作曲時のデフォルト音であるピアノ音が出せないといのがあり今回は断念。
V-SYNTH GT は系譜としては初代 V-SYNTH → V-SYNTH Version 2.0 → V-SYNTH GT → V-SYNTH GT Version 2.0 の流れの 2009 年の時点での現行機です。
その細かなスペックなどについてはフラッグシップ機ということで充実したページが Roland サイトに掲載されています。
Roland V-SYNTH GT のページ
http://www.roland.co.jp/products/jp/V-Synth_GT/index.html
ということでここでは簡単に“ V-SYNTH GT ってどんな感じ”でいつものウチのサイトらしく軽くいきたいと思います。
音源形式は簡単に言えばサンプラー+ VA (ヴァーチャルアナログ)の音源を 4 系統使える方式です。
サンプラーと言っても確かにサンプラーなのですが、今どきらしく、パソコンで生成した WAV ファイルをUSB でやりとり出来る点と最初からかなりの数のデーターをプリセットとして保持(本体 RAM : 64MB )していますので実質 PCM シンセみたいなものです。このあたりは最近のワークステーションタイプの PCM シンセも呼び方が逆なだけで PCM 部に WAV ファイルのインポートができますので、V-SYNTH GT は全 PCM データを書き換えることが可能な PCM シンセと考えても大した違いはありません。

ただし、その PCM の呼び出し方式が初代 V-SYNTH のときから受け継がれる“バリフレーズ”方式で、これは DAW/DTM の Pro Tools でいうところの“エラスティック・タイム機能”や、SONAR では“ V-Vocal 機能”と呼ばれる、ピッチ変更に伴うサンプルの時間やフォルマント変化をリアルタイムで制御処理できる優れものです。
実際の演奏ではハードシンセらしくそういった処理を行っているにも関わらす遅延も感じないし、音程を変えたときの従来 PCM シンセでの不自然さを感じることも無く違和感無く演奏ができます。もちろん最新の PCM シンセではその音域の変更による不自然さをマルチポイントで収録した PCM 素材をレイヤーや音域で使い分けることで自然な音を出すのですが、V-SYNTH GT はそこを“シンセサイザーらしく”という表現も変ですが“音作り”によって実現しています。

そして、もう一つの音源部の“柱”が VA です。こちらは V-SYNTH GT では 1 つの音色=パッチは 2 つのトーンで構成するという基本的な概念(旧来の V-SYNTH シリーズでは 1 パッチ= 1 トーン)ですので、4 つのオシレーターで 1 つの音色を作ることになります。もちろん 3 つ VA で 1 つ PCM などの構成も可能です。ここで最小単位のトーンで見てみると、

2 オシレーター → 2 フィルターらしきもの( COSM ) → 1 アンプエンベロープ → + AP シンセスやらエフェクターやら盛り沢山
という構成です。もちろん各セクションにエンベロープやら LFO やらこれまた盛り沢山です。かなり適当な表現をしていますが、その音源部の各パートをかなり自由に組み合わせることができる V-SYNTH GT では、固定的な概念で考えずに“何でもできる”で音作りを行えるほど自由度が高いのです。
アナログ音源部には Roland謹 製の Super SAW をはじめ、エイリアスフリーの基本波形から旧 JUNO の波形までバリエーション豊かです。

そしていくつかの波形で使えるサブオシレーターも搭載しています。サブオシレーターに関してはエイリアスフリーの HQ 波形では使えなかったりしますがこのあたりは Virus シリーズでもサブオシレーターを使うと発音数が減ったりとなりますので条件的には似たようなものでしょう。
VA とサンプラーを組み合わせて作ったオシレーターを次に通すのがいわゆるフィルターなのですが、ここがまた説明するのが大変なくらい種類があって、これまた適当に説明すると、アナログモデリング系のフィルターと従来のデジタルフィルターがあってそれぞれにハイパス、ローパス、バンドパス・・・などなど・・・などなど豊富に用意されています。デジタルフィルターも従来のものより随分と良くなっていてスィープ時の切れ方や発振もかなり自然な心地よりサウンドになっています。


そして AP シンセスという“奏法モデリング”と言うべきでしょうか、擦弦楽器や吹奏楽器の独特の演奏方法をモデリングして実際の演奏に反映する機能が V-SYNTH GT にはついています。これはどこまで可能性が広がるのかが個性にもなりますが、キワモノ機能ではなく普通に使える感じで、リアルバイオリンに AP シンセスを使うといった事から VA で作ったいかにもシンセなヴァイオリンサウンドに AP シンセスをかけたりして遊んでいます。
エフェクト部は V-SYNTH GT Version 2.0 でかなりバリエーションを増やしたとリリース情報にありましたが、VA サウンドを多用する私の偏見では“普通”です。音源部もフィルターも気に入っていますがこのエフェクターだけは普通かなぁと感じています。
3 系統を同時に使用できるのですが、それぞれで使えるエフェクターの種類が数は多く搭載されているものの固定なのです。どうせなら全てのエフェクターを 3 系統に自由に配置できるようになっていれば良かったのにと思うのが唯一の不満らしき不満です。
もちろんそれぞれのエフェクターの品質は個性的な強烈なものは少ないものの高品質な感じです。
最後に外見というかハードウェア的に見ると、鍵盤はヨーロッパ系シンセでよく使われている FATAR 鍵盤より軽いけれどもウエイト感がしっかりある鍵盤です。弾いているときのカタカタノイズも高い成分は無くカタカタではなくポコポコした感じの音で静かです。
ノブはラバーコートで文句も無ければ誉める言葉も無し。全体的には旧バージョンの目につくシルバー部分を控えたことで落ち着いた良いデザインと思います。
タッチパネルはかなり軽快です。KORG M3 よりコントラスト(明るい暗いの差)がはっきりしていて見やすく、タッチパネルの操作感は CPU のデュアル化のおかげでサクサクと画面が切り替わりかなり軽快です。
ディスプレイ下に配置されたノブも各画面でタッチパネルのみでも操作できますが必ず各画面でパラメータをノブに割り当てられていますので、直感的に操作できるように覚えてしまえばかなり便利そうです。慣れの問題で私はこのディスプレイ下のノブは min → MAX タイプではなくロータリーエンコーダーノブの方が良かった気がしますが好みが分かれるところかもしれません。

国産では数少なくなった VA (ヴァーチャルアナログ)音源搭載のいわゆる“リアルシンセサイザー”としての V-SYNTH GT。Roland のシンセサイザーメーカーとしての一つの提案としてこれからもこういうシンセを作り続けてほしいものです。
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